LIVE NIRVANA INTERVIEW ARCHIVE February 19, 1992 - Tokyo, JP
Personnel
- Interviewer(s)
- Naomi Ohno | 大野奈鷹美
- Interviewee(s)
- Kurt Cobain
- Krist Novoselic
Sources
Publisher | Title | Transcript |
---|---|---|
BURRN! | NIRVANA: INTERVIEWS NOT LIKE INTERVIEWS IN JAPAN | Yes (Nihongo) |
Transcript
アンダーグラウンドからメインストリームに 引きずり出されたシアトルの新しきノイズ・メイカーかが 残していったある日の3時間半……。
BY NAOMI OHNO/BURRN!
まず、取材先ですべてのスケジュールが 1 時間近く 遅れていることを知る。さらに、ドラマーのデイヴ・ グロールは風邪でダウンし、ベーシストのクリス・ノ ヴォゼリックと共に現われるはずだったカート・コバ ーンは、疲れたから少しだけ部屋に戻ると言い残して しばし行方不明になった。……こうなると、物事はな るようにしかならないワケで、自動的にアタマの中の レバーがアセってもシカタあるまいシフトに入るのは、 ほとんど職業病である。 ……この"…… の間、す でに 1 時間半経過していると思ってください) とりあ えず、クリスがインタビューに応えてくれることにな った。彼自身 トッチラかってしまったこれからの取 材スケジュールが一体どうなっているのか把握できな い様子だったが、とにかく、用意された部屋で話を聞 く ことができた。
TEEN SPIRIT: I CHRIS NOVOSELIC
俺はステイタスを失った。反体制じゃなくて主流になったからね
–––– もうずいぶんツアーに出ていますよね?
クリス・ノヴォゼリック(以下C) : 去年の8月からか な。アメリカとヨーロッパ、オーストラリア、ニュー ジーランドに行って、それからシンガポール……。
–––– 日本のツアーが終わったあとは?
C : 4ヵ月間オフ。ホーム・ビデオを作るからそれに 専念することになるだろうけど、普通の生活に戻るよ。
–––– あなた達がアメリカを離れている間に、大変なこ とになりましたね?
C : うん。特に物事がこう速く進んでいくと、いきな り人にジロジロ見られるようになったり、ヒソヒソ話 をされたりもするけど、友人達や家族は以前と変わり なく俺達の成功を喜んでくれているよ。
–––– 有名になり始めると、急に"友人" が増えたりし ません?
C : そうなんだよな。何年も信っていないような人達 から 元気ですか? なんてカードが送られてきてさ あ……。 "ああ、元気元気 "ってなカンジだよ。
–––– この大成功と上手く付き合っていると思います?
C : そうできるようトライしてはいるんだけど、周り の物事や動きを常に把握していなければならないよね。 常に注目されているし、常に集中していなければなら ない……。そうしなけりゃ、この状況に押し流され、 溺れてしまう。俺は酒もやめたんだ。そのほうがイン タビューの時にも、よりはっきりと表現できる。 物事 も良く見えるから、アタマもちゃんと使える。
––––忙しくて、自由な時間は減ったでしょうね?
C : バンドに100%費やしたからね。バンドがこうなっ たのは嬉しいけど……もう仕事を一切しなくてもいい だけのレコードを売ったし……。
–––– でも、これからも宙楽を作っていくわけでしょう?
C : もちろんさ。仕事って寺ったのは、ツアーやイン タビューといったロックン・ロールに関わることって 意味だよ。だって「NEVERMIND」はもう1年も前にレ コーディングしたんだよ。 成功して、歴史に残る作品 になったけど、俺中は今もこうして「NEVERMIND」の プロモーションをしてるんだ。今でも何か言わなきゃ ならないし、できればその度に何か変えたり、俺達の 音楽の原動力は、なんて話をしてるんだぜ。
–––– 「NEVERMIND」はあなた達にとってはセカンド・ アルバムで大ヒット したわけですが、あなたは "完れ ている数"だけ、ちゃんとあなた達の音楽が愛されて いる、と信じています?
C : 信じてるよ。 1枚目の「BLEACH」はインディーズ から発売されたから、あまり宣伝もできなかったんだ。 俺は、もし 1 枚目も大々的に売り出されてメディアが 注目しててれてたら、もっと売れたと思うからね。
–––– 大手から出た結果、「NEVERMIND」 は大ヒット となったことに対して抵抗はないわけですね?
C : ないよ。 最高じゃないか。いろいろな人達が俺達 のために働いているということは、自分で心配しなく てもいいわけだし、それが俺達の邪魔になることはな い。レコード会社に億中のアルバムが出たと宣伝でき るだけの予算があればみんなに知ってもらえるし、大 手から出れば、俺達のレコードを欲しいという人違も 簡単に手に入れられる。ということは、俺達は音楽に 専念できる自由を持つことができるってことさ。
–––– きっき言っていたプロモーションですけれど、こ れだけヒットすれば、確かに "仕事" をしなくても済 みますよね?
C : 俺達がやるって決めたんだ。ここでこうしてイン タビューに応じたりツアーに出たりせず、レコーディ ングに入ることもできたかもしれないけど、俺達はも っとアルバムを売って、世の中に 少し違う音楽"が あることを知ってほしかったんだ。 例えば MUDHONEY、SONIC YOUTH、DINOSAUR JR……こうし た億連に成功への道を切り開いてくれたバンドに、今 後は俺疾の成功を上手く使ってほしいよ。
–––– 「NEVERMIND」は 1 位になったのみならず、ず いぶん長い間ヒット・チャートのトップ10に居座り 続けましたが……。
C : どうしてそうなったのかはわかるよ。俺連はひょ っとしたら一時的な注行りの “今年のバンド" ってや ツなのかもしれない。でも、俺連がトップになったこ とを信じられないってのは理解できない。きっと人間 が月を歩いた時も信じられなかったんだろう。
–––– この成功で一番得したと思うことは何ですか?
C : 得したことは………たくさんあるよ。 大勢の人々が インディーズのバンドのことをもっと知りたいと思う ようになっただろう。そして俺達は経済的にラクにな った。でも、俺個人としてのステイタスは失ってしま ったよ。もうクラブではプレイでまきないし、俺信はア ンダーグラウンドではなくメインストリームのバンド になってしまったからね。反体制文化でもなくなって、 主流をいく文化の中に吸収されてしまったけど、主流 ってヤツは、まだ俺達とは同化していない。
–––– でも、クラブでプレイしようと思えば今でもできま ますよね? 一騒動になるでしょうけど……。
C : でも、俺達がスタートした順からファンでいる人 達もいるから、数百人しか入らないシアトルのクラブ なんかに出たら…… 先週俺達のアルバムを買ってくれ た人を入場させたら……そういう人達がもっと親近感 のあるクラブで観たいとしても………別に俺達は構わな いけど、以前からのファンが入れなかったら…………。
–––– 「NEVERMIND」には、今でも満足しています?
C : もちろんさ。いいアルバムだよ。俺達はフィーリ ングを込めて自分造のプレイにのめぬり込まなくてはミ ュージシャンでいる意味がない。そうでなければ何も 音楽している必要はない。俺達は「NEVERMIND」を幅 広いアルバムにしようと意識して作ったんだ。アルバ ムのどの曲を聴いても同じサウンドというものにはし たくなかった。時間を掛けて、違うギター、違うフィ ーリングを入れ、様々な要素がミックスされているも のにしたかったんだ。その目標は果たしたよ。多くの 人達にアピールできたからこそ、今では好きなことが できるという贅沢を手に入れられたんだ。次のアルバ ムでは、結果を心配しなくてもいいんだから。
–––– 次のアルバムは、どうなるのでしょう?
C : 極端になると思う。キレイでメロディックで耳障り でワイルドなものになるよ。 そして「NEVERMIND」 でメインストリームだと言われたことを、すべて否定 するようなアルバムになる。人々が本当に値眉のこと をどう思うか、試す作品になるよ。
–––– あなた適の異常なまでのヒットは、誰にも説明で まないものでしたが、あなた自身はどう考えます?
C : それはつまり、どうして今まで端っこにあったも のが突然真ん中に踊り出てきたか、ってことなんだ。 俺にはわかるような気がする。違うものが欲しかった からだよ。メロディもあって本物の曲が入っている本 物のアルバムだからさ。コンピュータや機械を使わず に、 3人の人間が実際に作った音楽だからだと思う。 これをきっかけに、ヘア・スプレーやリップスティッ クを使っているようなバンドがいなくなって、新しい ロック・シーンが誕生するかもしれないな。
–––– 例えばMETALLICAのようなバンドがアルバムを 1 位にしたことが、あなた達のような音楽をトップに 押し上げることに何かしら関係したと思いますか?
C : いや、 それは言えないな。 METALLICAには根強い ファンの基盤があったから、俺達の場合とは違うと思 う。 まあ、日に日にシーンは変化するからねえ……俺 達もその1つのきっかけとなったかも……。 それが良 いことなのか悪いことなのかは、これからの様子をみ てみないと何とも言えないけどね。
クリスはテープを止めるとゆっくりと立上がり、部屋 を出ていった。彼と入れ代わりに入ってきたのはレ コード会社の引当氏で、カートが 1 時間後に自分の部 屋でインタビューに応えると言っているという有り難 い情報を持ってきてくれたのだった。取材用に用意さ れた部屋ではなく自分の部屋で、ということは、普通 の客室ということだ。ま、よくあること、ではないが、 たまにはこういうこともあるのである。
……。(この"……" の問に約 1時間経過) エレベ ーターに乗り、言い渡された部屋番号を目指す。 部屋 に一歩入るとそこにカートはいた。ただし、カート| 人ではなてく 今操のツアーに同行している彼のガールフ レンドであり過池なオルタナティヴ・バンドと称され るHOLEのヴォーカリスト、コートニー・ラヴも一緒で ある。ベッドの上に横になって半生を起こしたまま、 カートは「ええと……30分くらいだって、マネージャ ーに言われてるんだ……」 と言った。コートニー嬢は 彼の横でガムなど噛みながら雑誌などをバラバラと接 っている。 2 人のいるペッドの端に腰掛け、インタビ ューを始めたが、なんだか、時間がゆっくりと過ぎて いくような雰囲気がするのは、 の-ん-び-り-し-ず-か -に(とこのくらいのスピードて読んでいただければ丁 訟良い) 話すカートから漂う特別な雰囲気のせいだっ た。
TEEN SPIRIT: II KURT COBAIN
売れたあとにレコードを買った人の大半は、音楽ファンじゃない
–––– そのパジャマはステージ衣装でもあるもの?
カート・コバーン(以下K ) : 今はね、そういうことに なった。 ラクだよ。暑苦しくなくて、涼しいし………
–––– きのうのコンサートで観客が一緒に歌っていたの はステージからもわかったと思いますけれど……
K : うん。大抵どこに行ってもみんな歌ってくれるけ ど、あれだけ大勢の人達が俺達の歌詞をわかってくれ ているなんて驚きだったし、嬉しかったよ。
–––– あなたははほとんとど喋らずにステージを進めていま したけれど、何か理由があってのことですか?
K : 歌うだけで十分言いたいことを言っていると思う から。曲と曲の間に何か言うヒマもないし………。だっ て、ギターのチューニングをしているか、ベダルをセ ットしているか、アンプのほうに近付いて次の曲に合 わせてトーンを変えてるか、ギターを持ち代えるかし ているんだから……。クリスのところにもマイクがあ るから彼が何か言えばいいとも思うけど、クリスはク リスでベースを代えたりステージを歩き回っているか らね………。そうなるとあとはデイブ次第だけど…… まあデイヴにはこれといって言うこともないだろうし、 それは俺も同じなんだ。特に英語の通じない国じゃ、 英語でジョークを言ってもその面白さをわかってもら えないから……。
–––– じつはシャイなのかな……と思ったんですよ。
K : ああ、そう思ってくれても構わないよ。
–––– 本軒は戦ずかしがり屋だとか……?
K : あまり話さないようにしているんだ, 俺はもとも と社交的なほうじゃないし、話したくない。 本当に好 きな人としかうち解けられないんだよ。ツアーの時に は親友が周りにいてくれるとも限らないし、クリスと デイヴはもちろん親友だけど……クルーも好きだけど さき……でも、俺、もともと話好きでもないから……。
–––– でも、ここまで注目される在在になるとそうも言 っていられないでしょう?
K :うん。
–––– それがストレスになることは?
K : そうでもない。何とかやっていけるさ。
–––– もうどのてらい家に帰っていないんですか?
K : 長すぎるくらい。……確か…ツアーに出て 7 ヵ 月になるけど、 その間に?2~3回帰ったんだ………でも それだけじゃねえ…。 日本が終わったら 4 ヵ月のオ フだから今から楽しみだよ。特に何かをするつもりも ないし、ノンビリと構えてやっていくさ。
–––– そのツアーを始めた時と今とでは、あなた連を取 り巻く状況もずいぶん変わってしまったでしょうし……
K : うん、ずいぶん変化した。 大勢の前でプレイする ようになったこともそうだし、サインをする数もイン タビューを受ける数も増えて、俺達のレコードもたく さん売れるようになった。でも、それ以外のことは毎 も変わってないよ。俺達は相変わらずユーモアもあっ て一緒にいるのは楽しいし……。
–––– ここ、日本の印象はどうです? 明らかに見た目 も違う人達に囲まれるというのは………
K : 人々の外見が違うってのは考えなかったな……ア ァメリカにだってアジアの人達はいるし、黒人も他の人 種の人も緑色の人だっているくらいだから……。で も、日本の文化には感じるところがあったよ。俺、英 合を覚えようと努力しない国には一目置いているんだ。 日本はそうだろ7 だって、みんながアメリカみたい になる必要はないんだからさ……ードイツとかじゃ、 み んな英語を勉強しているみたいだったけど……。
–––– 日本でも同じですよ。たくさんの人達が英語を 習っていて…
K : エンターテインメントの世界の人達はそうなのか もしれないけど、日本の文化を失いたくはないだろ? アメリカに近付きたいがために日本の文化を犠牲にし たり、変えたくはないだろ? そういう意味では日本 の文化を保存しようとしているように思えるよ。
–––– さて、 今でも話題のアルバム「NEVERMIND」は 1 年ほど前に作られたものですが、振り返って……
K: 1年前? そんなに前じゃないよ。
コートニー・ラヴ(ノ以下C) : 1 年前よ。
K : そんなに前だっけ……? もうそんなになる……?
不思議だな。……そんなことないだろ?
C : 1年経つわ。
K : そうだな……振り返ってみると、もっとナマっぽく くプロデュースしたほうが良かったと思う曲もある。 あんなにクリーンなプロダクションではなく、へヴィ にすれば良かった。俺、クリーンなプロダクションは 好きじゃないんだ。SKID ROWみたいなああいうコマー シャルなハード・ロック・バンドと比べれば、「NEVERMIND」のほうがナマっぱいと思うけどね。 次のアルバ ムはきっと「BLEACH」と同じようにナマっぽくなると 思うよ。
–––– 次のアルバムは、どのてくらい進んでいるんですか?
K : アイディアはたくさんあるんだ。 67曲くらい はね。今のところ出来上がっているのは静かでメロウ でクリーンな曲だから、これからハード・ロック・ア ンセムを…… "Smells Like Teen Spirit" みたいな曲 を書かなきゃダメだろうな。別にプレッシャーからそ うしなくてはいけないというんじゃない。自分でそう したいからなんだけど……。
–––– "Smells Like Teen Spirit" はロック・アンセ ムに成り得たと思います?
K : う~ん、そう言ってくれる人はたくさんいるし、 短が言うロック・アンセムってのは皮肉な意味もある んだけど……。 でも、そういう要素はあると思うよ。
–––– あなたにとって、どういう曲がロック・アンセム てですか?
C : "Born To Run"。(ブルース・スプリングスティー ンの代表曲)
K : "Born To Run" ね。 ♪……rock n' roll to you ♪ あの曲は大名いだよ。(と、ここて電話がなる)
C : (電話に)彼ならここにいるわよ。 ……え? fxxk You ギター、持ってきてよ。
K : 単にポビピラーな曲って意味さ。バンドにとって いちばん人気のある曲が大抵、そのバンのアンセム になるよね。AC/DCなら "Back In Black" とかさ。
C : "Stairway To Heaven"。 "Highway To Hell"。
K : そういうヤツ。そういうのがアンセムさ。
–––– そういう曲を書くのは、ミュージシャンとしては 夢の一つとも言えるのでしょうか?
K : 夢1?そんなことはないよ。夢ってのは夜、寝て いて冷や汗をかいて起きてしまうような……-。
C : (自分のおなかを擦りながら)でも私達には子供が 生まれるじゃない/
K : (ベッドの脇の花束を手にとって)コートニー、そ の花はどこからきたか知ってる ?
C : それは私のよ。あなたのじゃないわよ。
K : どうしてわかるんだ?
C : 私のレコード会社の人が私にくれたの。私だって 有名なんだから! (と言ってベッドを跨いでで部屋を出 ていく)
–––– ガールフレンドがロック・バンドをやっていると いうのは利点ですか ?
K : 個人的に言って、いいこともあると思う。どの女 性もロックン・ロールをプレイするべきだと思う よ。 どうも女性はアコースティックをプレイすべきだと思わ れているようだけど、アコースティックじゃなくて エレクトリック・ギターをプレイしてハード・ロック をやるべきだね。だから俺は少年ナイフが好きなんだ。 日本では女性がロック・ギターをやるのは良くないと 考えられているらしいけど俺は素晴らしいと思うよ。
–––– 女性ミュージシャンは、男性にはできないことを やっていると思いますか?
K : 女性は、男が考えつかないようなことを思いつい たりするよ。 女性のほうが大半の男よりずっとアタマ もいいし賢いよ。 女性のぼうが優秀なんだ。残念なが ら、まだ女性のロック・プレイヤーは少ないけど、そ れは音から性的差別やらで女のロックへの興味を削ぐ ようなものがあったから、それで女性がロックの世界 に入るのを怖がらせてしまったような気がする。そう いうのは、アート をやろうとしている人を否定するこ とと同じさ。でも、女性だけのバンドを始めようとい う人は増えているみたいだから、これから良いソング ライターも出てくるだろうね。
–––– 彼女のバンド以外に女性のいるバンドて気に入っ ているものは?
K : たくさんあるけど……PIXIESとかSONIC YOUTH とか……。 もっと出てくるといいな。コートニーのパ バンドのギタリストは男なんだ。彼は凄くいいヤツだよ。 女だったらもっといいだろうなあ……。 別にけなして 言ってるわけじゃないよ。彼とはいい友人だし……。
–––– その拡に、女性ばかりのバンドでプレイするのは どういう気分か、訊いたことはありきい?
K : ……いや、それはないな。
–––– あなたがもしそのだったら?
K : 多分、凄く楽しいだろうし、好きだと思う。 どう だろうな……バンド内に男と女の関係があるとすると 問題だけど……それがなければ特にNIRVANAと変わら ないと思うよ。
–––– 「NEVERMIND」は今もセールスを伸ばしていま すが、ここまでロング・セラーを続けることは、いい アルバムだからというよりも、ヒットしているからと いう動機で買っている人達の多いとも思えますが、ど う考えます?
K : レコードを買う入の大半は、音楽ファンではない んだよ。 音楽を理解できなくて、良い音楽か悪い音楽 か判断できない人が多いんだ。 人生の杜交的な意味に おいて、BGMとして音楽を使っているのさ。 本当に好 きで、意楽を自分のアイデンティティとしている人も いるけど、レコード店に行って、とりあえずトップ10 に入っているのを買うって人もいるわけでね。とにか く人気があるからという理由で…… (と、言い掛けた 時に電話が鳴る) もしもし、何? 彼女が知ってるペ きだって? おかしいよな。(笑) 読んだよ。……う ん、 大笑いさ。 ……そんなことないって/ 俺にはジ ョークとしか思えないね。……わかってるさ。ああ、 明鳴らないでくれよ。もう切らなきゃ……。
で、何の話だっけ……? ああ、そうか、100万枚 以上売れてからは、レコード店に行ってトップ10をそ のまま買う入ってのは、例えばハイ・スクール時代に 他の人に受け入れてもらいたいがために、やるべきこ とをちゃんとやる人気者で、でも、じつは音楽なんて 大して好きじゃなくて……。たまたま入ったクラブで ダンスする時に掛かっている音楽でもハッピーになれ たり一緒にロずさんだりできまる…………(と、ここでツ アー・マネージャーが入ってきて、カートに何かを渡 す) ああ、ありがとう。俺の上着は ?
マネージャー : デイヴの部屋にあるよ。
K : 0K デイヴは今、コートニーと一だろ? それ ともキミの部屋 ?
マネージャー : デイヴの部屋さ 。(と言って出ていく)
K : あ~あ、 また話が中断されて何を量っていい のかわからなくなったよ・………確か、何か主張しようと していたんだ……何か話すべきことが-……
–––– 音楽を本当に好きなわけではない人達が、という お話でしたよ。
K : ああ……ああそうだ、音楽は単なる BGMで、 音楽 を本当に好きなわけじゃないってそういう人は、俺も たくさん知ってるよ。俺の両親だってそうさ。何年分 ものヒット曲を集めたレコードが10枚くらい入ってる ポックス・セットを通信販売かなんかで買って、ステ レオで掛けてる。あとはAMラジオを聴くくらいなんだ けど……そういうタイプの人が、 ただレコードを買う 余裕があるからと、音楽なんてそれほど好きでもない のにとにかくレコードを買うんだよな。
–––– そういう冷静な考えを持っていないと、成功した ミュージシャンとしては上手くやっていけませんよね?
K : そうだよ。だって、そんなことは以前から変わっ ちゃいないんだ。 | 位になったなんてツマラないこと だよ。次もまた !1位になることなんて期待していない し、俺はクリスもデイヴも好きだけど、このバンドで ずっと長く一緒にやっていくとも思えない、。 あと10年 も一緒にいるとは思えないね。 自分の中に、一生自分 の作品として満足して納得のいく 曲は生まれないと思 う。 トップをとっても今ではすっかり忘れ去られて笑 い話になるバンドがたくさんいるよね。例えばADAM ANT、CULTURE CLUB、KNACKに HAIRCUT100…… 数え切れないくらいさ。俺違だって、そういうバンド と同じだよ。今こうしている問は楽しませてもらうけ どと、以前からトップになることを意識していたわけで もないんだから、今さら意識する必要もない……。
–––– トップになって、損をしましたね?
K : うん。とても残念さ。 音楽をあまり好きじゃない 人達にまで知られてさ……。
–––– あなたはギタリストでありヴォーカリストですが、 自分を表現するにはどちらがやりやすいと思いますか?
K : 俺は……ギターをプレイするのが好きなんだ。 も ともと、ただギターをプレイしたかったんだから… …。 ヴォーカリストになんて、なりたくなかったけど、 見つからなかったから……。俺は後ろのほうでリズム・ ギターをプレイして、音が外れたようなヘンなスタイ ルを築き上げたかったんだよ。シンガーが見つからな かったから歌うようになったけど、結構たくさんの人 達に、俺の歌はユニークでそれもバンドが成功した理 由の 1 つだと言われるし、自分でもそう思うこともあ るよ。ユニークてで少し違った声だどって……プライアン・ アダムスに少し似てるけど……*。
と自分で言って、カートは少しイヤそうな顔をする。 そして、インタビューはタイム・アップとなった。
いつも周りの喧騒とは別世界にいるカート (そして メンバー全員) とは、次の日、コンサート会場となっ たホールの楽屋で写真撮影のために再び会ったが、カ ートは同じパジャマ姿のままウォークマンを離さず、 周囲の世界の音を遮断し、無表情だった。それを “ら しい" とか “やっぱり"としたり顔で表現するには、 私は彼のことを知らなさすぎる。ただ、彼らが自分を 保ち、流されないように、と表現する周囲にあふれて いるのは、“らしい~ とかやっぱり" と簡単に言い放 つしたり顔の群れなのではないか、と、そんな気がし た。
© Naomi Ohno, 1992