LIVE NIRVANA INTERVIEW ARCHIVE December 6, 1991 - London, UK
Personnel
- Interviewer(s)
- Midori Tsukagoshi | 塚越みどり
- Interviewee(s)
- Krist Novoselic
- Dave Grohl
Sources
Publisher | Title | Transcript |
---|---|---|
Music Life | Nirvana | Yes (Nihongo) |
Transcript
アメリカでは200万枚以上を売ったデビュー・アルバム「ネヴァーマインド」。イギリスでも多くの信奉者を獲得、またミュージシャンの中にもニルヴァーナを支持する声は多く、彼らへの評価は日々高まるばかりだ。そんな折、2月に初来日公演が決定 !
‘91年12月、 イギリス・ツアー中の彼らに現在の状況や、初来日の抱負などを語ってもらった。
2月、初来日決定 !
NIRVANA
ニルヴァーナ 最新インタビュー
最初、ゲフィンは僕達のアルバムを5000枚しかプレスしなかったんだよ
インタビューと文◾ 塚越みどり / 在ロンドン本誌レポーター by Midori Tsukagoshi/London Correspondent
pix:Midori Tsukagoshi
“Freedom from pain, suffering and the eternal world(痛みと苦しみに耐えることによって得られる自由、永遠の世界)"こんな意味を持ったニルヴ
ァーナというバンドのヴォーカリストでありギタリストであるカートは、「そして、それは僕のバンクの定義と極めて近いものなんだ」と、ニルウヴァーナというバンド名を説明する以外にひとことつけ加えた。パンクのスピリット、アティテュードを持つハード・ロックとでも形容したらいいのだろうか。ニルヴァーナの音楽の中に溢れるアクレッション、パッション、エネルギーというものは、本当に久々にメガトン級の“スリル”を与えてくれた。彼らの音楽には、奮い立つほどゾクゾクさ
せられる。 衝動に突き動かされて音楽に向かい合っているような彼らのロックは、ピュアでエネルギーに溢れ、手で触れられそうなほど確かなアティテュードがある。
そんな彼らのライヴは、最も楽しみにしていたコンサートのひとつだった。そして彼らのライヴは、問違いなく、1991年のベスト・コンサートのーつだった。 本当に最高のライヴだった。
そんな彼らにインタビューしたのは、ロンドンでのコンサートの翌日、 残念ながらカートは、ノドを腫らして病床にふせっていたのだが、「今朝はカフェに行って、フラッとその辺を散歩して来たんだ」というクリスと、裸足でホテルの階段を降りて来たデイヴが応じてくれた。
ステージの上では、ブタみたいに汗をかくんだ(!?)
⸺ 昨日の『キルバーン・ナショナル』でのショウはどうでしたか ?
クリス 最高だったね。みんなが叫んでくれたりする光景というのは、本当にグレイトなんだ。それがミュージシャンでいることの、ベスト・パートなんじゃないかな。ツアー・バスに乗って、次の場所へ移動して、ホテルに入って…ということの繰り返しは、まったくの厄介者だけど、それはライヴでプレイすることの代償だと思ってるよ。
昨日のショウは、本当に最高だった、赤ワインを飲んで…。
⸺ あなたがステージ上でプレイ しながらワインを飲んでいるところは、見てたわ(笑)。
デイヴ 僕はウォッカを飲んでいたんだけど、あれは間違いだった。、 ショウの途中でゲロを吐きそうになったよ、気分が悪くなって、途中何度もオエッオエッときた、ドラムをたたいていると、胃が上下しているみたいな気分になるんだ。
⸺ イギリスのオーディエンスとアメリカのオーディエンスに、何か違いは感じた ?
クリス ううん、そんなことはなかった。みんなロックン・ロールを存分に楽しんでくれていたよ。
音楽は "インターナショナル・ランゲージ"だというけど、それは真実だよ。僕達は僕達のパッション、フィーリングといったものを、 自分達の音楽の中に込めようとしているんだ。人々がそういうものを僕達の音楽の中から拾い上げてくれたら、と思っているよ。
⸺ 私自身あなた達のショウは、本当に楽しかった。本当に最高だと思ったし、それにすごく暑かった !(笑)
クリス そうなんだよ(笑)、プレイしていても、まるでサウナの中にいるみたいな気がしてたんだ。
デイヴ アメリカ・ツアーではこの部屋くらいの、クラヴでギグをやったんだけど、200人のキャパシティのところに400人が入って、まったく信じられないほどの熱気だった! すごく楽しかった。
クリス もう、みんな汗グッショリで, 5ボンド(約 2.3 kg) は体重が減ったね。あれは、ほとんどスイミング・プールだったよ(笑)、 エネルギーというエネルギーを全部放出して、ビールを5本ガブ飲みしたって、おっつかないよ。 ブタみたいに汗をかいたよ (笑)。 (ブタは汗かくのかな…!?)
⸺ 今回のイギリス・ツアー中にファンの人と話はできたの ?
クリス ファンとはいつでも話をしているよ。みんなよく話しかけてきてくれる。たまにはそれが多すぎる時もあるけど.。大抵「ツアーはどう?」とか「明日はどこでプレイするの?」とか、そうけいうことを話しかけてくるんだ。
デイヴ あー、そう言えば、昨日ある男の子に妙なことを頼まれたよ。ベルファストでプレイする時 「ティム、ハロー! タブー、バババ~」って何言われたのか忘れちゃったけど、ステージでそういう風に言ってくれ、って言うんだ。僕、やるって約束しちゃったんだけど…。
⸺ ところでアルバム「ネヴァーマインド」は、全米アルバム・チャートでトップ5 に入る大ヒットになったけど、こういったことが起きるというは予感はあったの ?
クリス いや、それにはみんな驚かされたんだ。
ゲフィン・レコードは5,000枚しかアルバムをプレスしなかったし、それはあっという間に売り切れて、その後1週間はプレスが問に合わなくて手に入れることができなかったくらいなんだ。 僕らは、アルバムがどんなに成功しても20~30万枚売れるくらいだろうと思っていたし、それでハッピーだと思っていた。 アルバム発売の前にアメリカ・ツアーに出て、その1ヵ月半後にシアトルに戻って、ツアーを終えた頃には「ゴールド・ディスクになったぞ!」って言われて「えっ!」って感じだったんだ。信じられなかった。
その後、ダブル・プラチナムになって、まったくの驚異だよ。俺自身そんなこと、夢にも思っていなかったからね。ゴールド・ディスクをとった時でさえ、「ゴールドだって?Jesus Christ!!」って感じだったのにさ、それにレコード会社も大々的に宣伝してくれていたわけじゃないし、宣伝らしい宣伝なんて見たこともない、本当にこの成功は、人工的に作り上げられたところのないものなんだ。
こんなにたくさんのレコードが売れたけど、僕ら目身、売ろうとさえしていなかった。でも、次のアルバムはもっと違ったものになるだろうね。
デイヴ うん、もっと、実験的なものになると思う よ。
⸺ もう、次のアルバム用に曲作りの準備を進めているの ?
デイヴ 数曲ね。すでに色々アイディアがあるんだ。自然に浮かんできて、それをしばらく使ってみて、それが僕らをエキサイトさせるものならば、それをとっておく。そしてそういうものをサウンド・チェックや実際のライヴでやってみるんだ。
ツアー中であろうと、 家にいようと、"曲がやって来る”といった感じなんだ。まぁ、これといって決まった曲作りの方法はないんだけどね。
僕らがやってるのはハード・ロックそれほどオリジナルじゃないよ
⸺ こうして成功を収めた後、以前よりたくさんの自由を得たと思う ?
デイヴ う~ん、そうだなぁ (とちょっと考えた後)、自由を得た部分もあるけど、 と同時に障害も増えたね。ある人々は、期待というものを持ったと思うし、でも僕は僕を除く人々の期待にそぐわなければという責任はあまり感じたくないんだ。
ニルヴァーナというバンドとして、僕ら 3 人が一緒にプレイしていて、ハッピーならばそれで充分なんだ。まぁ、責任というのは、インタビューを受けたりとかそういうことで、そういうことは僕らにとってはジャマなものなんだけど。でも、音楽的には自由があるよ。
⸺ インタビューとかの取材にうんざりすることもあるんだ ?
クリス&デイヴ もちろんさ !(笑)
⸺ じゃあ、そういう時はどうするの ?
デイヴ 「Sorry!」って言って、やめちゃうんだ(笑)、この前イギリスに来た時には、雑誌、ファンジン、 新聞用に15本のインタビューをやったんだけど、その後数週間後にここに戻って来ると、それに加えてさらに12人の人から取材の申し込みが来てる !
クリス 前の時は大きな雑誌とかの取材をやったから、今回はファンジンや学校新聞なんかの取材をやったよ。でも『VOX』 とか『Q』とか (どちらもイギリスの音楽誌) の取材は受けた。彼らは、僕らが1989年に初めて来た時、 僕らのことを取り上げてくれて、色々やってくれたから、はずすわけにはいかないと思ってるんだ。
⸺ ところで、随分長いことツアーに出ているけど、ツアーの間はどうやってエネルギーをチャージしているの? リラックスの方法は ?
デイヴ ステージに上がる直前というのは、いつどんな時でもエキサイトするものなんだ。少なくとも僕はそうだね。大勢のオーディエンスを見ると、僕、今でもナーヴァスになるんだよ。昨日はかなりナーヴァスになったな。
クリス 僕はほとんどナーヴァスになったことがないんだ。ステージに上がるとすっごくエキサイトして、エネルギーがガーッと溢れ出てくる感じなんだ。こんなに長いことツアーを続けている今でも、そうさ。
⸺ ステージが終わった後は、すぐに落ち着きを取り戻す方 ?
クリス いや、朝方 4 時から 5時まで、元気なままさ !(笑)
デイヴ というのは、一日中、じっと車の中に座っていて、ドライヴして、待ち時間ばっかりで、そしてプレイする。だからプレイの後って、ようやく目覚めたって気分なんだ。
⸺ じゃあ、昨日の夜はライヴの後何をしたの ?
クリス 僕はクラブに行った。
デイヴ 僕は…寝ちゃった。 とにかく疲れていたから。
⸺ 多くのミュージシャン、例えばメタリカやL.A.GUNS、イギリスのバンドの中でもネッズ・アトミック・ダストビンなどがニルヴァーナをフェイヴァリット・バンドに挙げているけど、その理由の多くは “オリジナリティ"を持つところだと言っているわ。あなた達自身が考えるオリジナリティとは何かしら ?
クリス 僕らは自分達のことを、それほどオリジナルだとは思っていないんだ。 僕らはハード・ロック・バンドなのさ。メロディがあって…。ただひとつ言えるのは、最近は多くのバンドがエアロスミスとか、ハノイ・ロックスみたいな同じような感じのことをしていると思うんだ。みんな同じようなビデオを作ってね。
デイヴ それに僕らはひとつのまとまったオーディエンスのためだけにやっているのではない、 と いうことは言えるね。
⸺ では、あなた達の音楽にとって、一番意味のあること、大切なことは ?
クリス うん。それはいい質問だ。(少し考えて)音楽そのものだね。 僕らはすごく努力していると思うし、自分達の音楽にいれ込んでいる。僕らにとって意味のあること、一番大切にしたいことというのは、毎日音楽と一緒に生きていられて、このバンドとしてずっとこれをやって行ける、ってことだね。
僕達はパーフェクトなミュージシャンじゃない、絶対に違う! (笑)
⸺ そう言えば、「パーフェクトなミュージシャンであるより、リアル・ライヴ・バンドでありたい」と発言していたけれど、その気持ちは今も変わりない ?
クリス 僕らはパーフェクトなミュージシャンじゃないよ。
デイヴ そう、ゼッタイに違う!(笑)
クリス 僕は最低のミュージシャンだ。
⸺ ステージを観ていても、テクニカルなものではなく、エネルギッシュなものを目指しているように見えたし、だからこそ私はすごく動かされたし、私の内側でもエネルギーが炸裂したの。
デイヴ うん。 僕らのライヴって、例えばイングヴェイ・マルムスティーンみたいに速弾きでギターを弾きまくるヤツよりは、ずっとフィーリングを得られるんじゃないのかな?ああいうのって、僕にとっては何も感じるものがないんだ。
クリス でも、ジミ・ヘンドリックスみたいなキタリストは、フィーリングもあったし、と同時に素晴らしいミュージシャンでもあった。だから、そういうふたつのものが同居することもあり得るんだ。
⸺ ところで、 2 月に日本に行くということだけと、少年ナイフのみんなから、色々日本のことは聞いているのでしょう ?
デイヴ うん。それにダイナソーJr.の連中からも 色々聞いたよ。本当にワクワクして、待ち切れない気分なんだ !
⸺ どんなことを楽しみにしてるの ?
デイヴ 僕はただ、色々歩き回って、街を見てみたいんだ。ただ単に行って、プレイして、帰って来る、というんじゃなくてね。だって、 日本ってしょっちゅう行ける所じゃないし、ディスコやナイト・クラブもチェックしたいね! (笑)僕の親父は、日本女性と再婚したんだけど、結婚式て彼女の家族に会ったら、もう、本当に信じられないくらい、とんでもなく礼儀正しいんだ。あの時は何だか自分がよた者みたいな気がしたよ(笑)。
クリス それに僕らは、日本のみんなか英語を喋れるなんて、期待はしていないし、むしろ僕らが日本語を勉強して行くべきだと思ってる。 まぁ、ちょっと怠け者で、なかなか実行出来ないところがミソなんだけど(笑)。
クリスもデイヴも、大変な音楽ファンだった。スペースの都合上カット してしまったが、しばしば横道にそれて、ふたりの間で交わされる音楽談義は、本当にとめどもなく、といった感じで、興味深かった。ステージでのワイルドさがウソのように、知的で、誠実な印象を与えるふたりは、日本に行くことを本当に楽しみにしていたが、彼らのライヴは、真冬の日本を思いっきり熱いものにしてくれるだろう。
© Midori Tsukagoshi, 1992